協賛の本間一夫文化賞に全盲のソプラノ歌手・塩谷靖子さん(外部サイト:読売光と愛の事業団 2024年11月)
下記は、2024年10月5日、読売新聞朝刊都内版に掲載された記事です。
視覚障害者の文化や福祉の向上に貢献した個人・団体に贈られる「本間一夫文化賞」の第21回受賞者に、ソプラノ歌手でエッセイストの塩谷靖子さん(80)(板橋区在住)が選ばれた。全盲のハンデをものともせず、様々な分野で精力的に活動してきた塩谷さん。「今も青春という気持ち。できるだけ長く活動していきたい」と語った。
先天性の緑内障で目が徐々に見えなくなり、8歳の頃、視力を完全に失った。一方、音楽の楽しさに出会ったのもその頃だ。誰もいない盲学校の音楽室でシューベルトの歌曲を練習し、子どもたちが歌や演奏を披露するラジオ番組にも何度か出演した。
点字試験を導入していた東京女子大に進んで数学を学び、プログラマーとしてシステム開発会社・日本ユニバック(現BIPROGY)に就職。目の見えない人でもコンピューター画面の文字を読めるよう点字変換ソフトを開発した。「なんでもやってみようと思った」。就職時の心境をそう振り返る。
結婚と出産も経験し、同社を退社した後、子育てに追われた時期もあったが、42歳のときに転機が訪れる。趣味の集まりで歌を披露したところ、たまたま居合わせた音大の教授から、「本格的に歌をやったらどうか」と声をかけられた。 レッスンを受け始めると、秘めていた才能が徐々に花開いた。勧められるがまま出場した初めてのコンクールで一次予選を突破。その後は入選を繰り返し、コンサート活動も始めた。一方、自身のホームページで半生をつづったエッセーが書籍編集者の目にとまり、2009年にはエッセー本も出版した。
様々な分野でマルチな才能を発揮してきたこれまでを振り返り、「色々なことに興味があって、あちこち寄り道してきた」と笑う。障害を抱えたことで心ない言葉をかけられ、苦労したこともあったが、少なくとも、「視覚障害は芸術的なハンデにはならない」と言い切る。歌詞から情景をイメージする想像力のたくましさが、表現をより豊かにすると考えるからだ。
80歳になった今も自宅で毎日、歌の練習を欠かさず、年間5回以上のコンサートをこなす。今年5月、音大出身の若手に交じって出場した奏楽堂日本歌曲コンクールで、奨励賞を受賞した。その知らせを聞いたとき、ふと川柳が頭に浮かんだという。
「われ傘寿 いま青春の 終楽章」
◇塩谷さんがソプラノ歌唱と自作のエッセイ朗読を披露するコンサートが16日午後1時半から、文京区の文京シビック小ホールで行われる。問い合わせは、及川音楽事務所(03・3981・6052)へ。
第一次予選には185人、第二次予選には40人、2024年5月26日に旧東京音楽学校奏楽堂で行われた本選には10人が出場しました。
音楽大学出身で、すでに活躍中の若い方々に交じって本選のステージに立てるだけでも満足でしたが、思いがけず奨励賞までいただき、驚いているところです。
ピアノ伴奏だけでなく、多くの励ましやアドバイスをくださった奥千歌子さんに、心からの感謝を捧げます。
塩谷靖子
令和6年度 奏楽堂日本歌曲コンクール 表彰式の写真
令和6年度 奏楽堂日本歌曲コンクール 本選会プログラム
本選会プログラム PDFデータ(画像形式)
令和6年度 奏楽堂日本歌曲コンクール 入賞・入選者一覧
第一位・中田喜直賞・木下記念賞(金)
森 翔梧(もり しょうご)
第二位・木下記念賞(銀)
上村 誠一(かみむら せいいち)
第三位・木下記念賞(銅)
石田 滉(いしだ きらら)
奨励賞 塩谷 靖子(しおのや のぶこ)
奨励賞 佐藤 克彦(さとう かつひこ)
入選 田中 裕太(たなか ゆうた)
入選 山田 知加(やまだ ちか)
入選 氏家 和歌子(うじいえ わかこ)
入選 藤原 優花(ふじわら ゆうか)
入選 大津 佐知子(おおつ さちこ)
(奨励賞・入選は出場順)
畑中良輔賞 上村 誠一(かみむら せいいち)
審査員特別賞 藤本 保江(ふじもと やすえ)
優秀共演者賞 尾崎 風磨(おざき ふうま)
「奏楽堂日本歌曲コンクール」に思うこと
■令和6年5月26日、奏楽堂の前にて、奥千歌子様との写真(撮影は「点字毎日」の谷本仁美さん)
■表彰状が届きました
塩谷靖子がNHK総合テレビに出演します。日時 2020年11月15日(日) 午前11時15分〜11時20分。番組名 「エール 古関裕而の応援歌」。現在放映中の、作曲家・古関裕而をモデルにした連続テレビ小説「エール」の関連番組です。番組についての詳細は、下記をご覧ください。
https://www.nhk.jp/p/ts/N7X7W93N5W/
5分間の番組ですが、私の歌とお話が放映されます(ピアノ伴奏 奥千歌子)。今年の7月3日に、板橋文化会館小ホールで収録したものです。古関裕而記念館が募集したエッセイに、私の書いた「柳青める日」が選ばれたことが、放送のきっかけとなりました。「柳青める日」は、下記のURLよりお読みいただけます。
https://nobuko-soprano.jp/essay/yanagi.htm
塩谷靖子が、2017年7月19日、NHK総合テレビの「ひるまえほっと」に出演しました。これまでの私の歩みなどが放映されました。下記をクリックしていただくと、そのときの会話やナレーションのテキスト、および放映された写真をご覧いただけます。
ひるまえほっとの当時の記事
雑誌「ハルメク」(2017年7月号)に載った塩谷靖子の記事をアップしました(音声読み上げには対応していません)。
日経xwomanARIA(2023年5月)に載った塩谷靖子の記事をアップしました(音声読み上げには対応していません)。※記事中「視覚障害者に大学受験の道を開き」とあるのは、正しくは「視覚障害者が大学の理系学部・学科の受験をすることへの切っ掛けとなり」です。訂正させていただきます。(塩谷靖子)
東京教育大学附属盲学校を経て、東京女子大学文理学部数理学科卒業。
「奏楽堂日本歌曲コンクール」入選。
「太陽カンツォーネ・コンコルソ」クラシック部門第1位。
「全日本ソリスト・コンテスト」入賞。
第20回「小諸・藤村文学賞」入選(発表 2014年6月26日)。
「文芸思潮エッセイ賞」最優秀賞。
2010年版「ベスト・エッセイ集」(文藝春秋)に作品が収録。
他
since 2000.6.11.